リスクノート
訓練は年一、名簿は週一で リスク対策の要点(19)
―有事対応のマニュアルを作成しました。どの程度の頻度で見直せばいいでしょうか。
「マニュアルはもちろん作成しなくてはいけませんが、それよりも大事なのが訓練の実施です。主な訓練は『TTX(図上訓練)』、『FTX(実動訓練)』、『CPX(対策本部訓練)』の三つがあります。加えて、リスク
対策担当者が自分自身の頭の中で有事を想定して対策を整理する『BTX(脳トレ訓練)』が非常に有効です。単独で、いつでもできます」
「BTXでは『米中枢同時テロ(2001年9月)に匹敵するテロがニューヨークで発生との報道がある』などと具体的な想定をし、その際に会社がどう動くかを考えます。具体的な想定の中で整理していくことで、足りているもの、足りていないものが明らかになり、リスク対策の発展、構築、整備が進みます。訓
練は年に1~2回の実施でいいでしょう」
「一方、週1回で確認したいのが、海外にいる従業員やその家族の人数と居場所です。出張などを含めると、週単位で人の出入りがあるでしょう。拠点ごとや部署ごとに把握していても、会社全体を一括して把握できているところは少ないようです。全体を集約する簡単なシステムで手間はかからなくなるでしょう」
「社員の安否確認は企業にとって極めて重要です。『フランス国内でテロが発生したら、距離が離れていてもフランス国内全土の安否確認をする。特別な事情がない限り、隣接国まで広げる必要はない』など、対応の具体的な内容は決まっているでしょうか。安否確認をするトリガー(引き金)と確認範囲についてあ
らかじめ決めておくことで、迅速な対応ができます」
―欧州は地続きですし、テロが発生したのがフランスであっても、隣接国を含めて安否確認をした方がいいのではないでしょうか。
「会社の規模や海外にいる従業員等の人数によって、対応はそれぞれでしょうが、頻繁な報告を求めるのは、現地にとって大きな負担です。安否確認に限らずどのような事態にどのような水準で現地から情報を上げてもらうのか、そのさじ加減と徹底ぶりがリスク対策担当者の腕の見せどころと言えます」
「うわさのレベルでも現地から情報を上げてもらうことはリスク対策にとって非常に重要です。現地が本来業務とは違うリスク関連情報を進んで伝えてくれるよう、担当者は日頃から現地の情報がいかに役立っているか理解してもらう工夫をするといいでしょう」
「やはり忘れてはならないのが、あらゆる会社で、外務省の『たびレジ』への登録と駐在員の在留届の提出は必須であることです。いま一度、社内で徹底させましょう」
(回答者・共同通信デジタル 小島俊郎リスク対策総合研究所長)